7月と8月の読書録になります。結構時間を割けました。
1 | 戦後史 | 中村 政則 | 岩波書店 | 新書 | ★★ |
2 | 或る「小倉日記」伝 | 松本 清張 | 新潮社 | 文庫 | ★★ |
3 | 黒地の絵 | 松本 清張 | 新潮社 | 文庫 | ★★★ |
4 | 西郷札 | 松本 清張 | 新潮社 | 文庫 | ★★ |
5 | 悪徳商法 あなたもすでに騙されている | 大山 真人 | 文藝春秋 | 新書 | ★★ |
6 | 金閣寺 | 三島 由紀夫 | 新潮社 | 文庫 | ★★ |
7 | オタクはすでに死んでいる | 岡田斗司夫 | 新潮社 | 新書 | ★★ |
8 | 私説・日本合戦譚 新装版 | 松本 清張 | 文藝春秋 | 文庫 | ★★★ |
9 | 義母・綾香 童貞レッスン(マドンナメイト文庫) | 真島 雄二 | 二見書房 | 文庫 | ★ |
1は、新書にしては珍しく300ページ越えの厚みで、一個一個の解説はさすがに駆け足な部分もありますが、それでも戦後60年間についての教科書としては手頃で、特にオレが生まれる前の日米安保や高度経済成長の項は興味深く読めました。
2は、新潮文庫の松本清張傑作短編集の第一集。とりあえず清張作品の入りとしては間違いないだろうと思い、読みました。
松本清張というとどうしても社会派推理小説というイメージがありますが、これは良い意味でそれを裏切られた感じがします。短編なのでどれも苦無く読めましたが、いわゆるオチの部分が淡々としたものが多く、少なくともハッピーエンドや逆転劇などは全くありませんでした。この点も良い意味で拍子抜けしました。
突き抜けるような面白さなどはありませんが、短編ということもあり、たまに読み返してみたくなる魅力はありますね。
3は清張短編の現代小説全7編、どれも面白かったですが、特に「真贋の森」「紙の牙」「空白の意匠」あたりが良かったです。「紙の牙」の終盤なんかは、清張を殆ど読んでいないオレが言うのもアレですが、清張の作品らしい展開で楽しめました。「空白の意匠」のラストもシンプルで意外でした。
これらの作品が書かれた頃の社会の縮図が随所に盛り込まれていて、それは今でも陳腐化されていないものが殆どで、今とは時代が違うと思いつつもそれほど違和感なく読んでいけますね。
4は傑作短編集の3巻で時代小説。オレは今まで時代小説というのをあまり読んでなく、これを読む前に「読みづらいのかな」と思っていましたが、いざ読んでみたら現代小説と差はなく、むしろ江戸初期から幕末、維新後が舞台となる物語にハマってしまいました。
短編ということでいずれの作品もテーマが明確であるから読みやすく、時代ものらしい主従関係から、現代とも共通する人間社会らしいものなど、幅広いながらもそれぞれシンプルで、非常に楽しめました。
5は、タイトル通り、いわゆる悪徳商法について書かれたもの。
2003年の本なので最近のネット全盛の詐欺や振り込み詐欺についての記述はありませんが、それでも古典的なものから裏金融まで一通り扱われていて、またそれぞれが非常にわかりやすく書かれており、最後まで飽きずに読み進めました。
最近頭のキレがなくなってきた両親にも読んでもらおうと思っています。
6はオレにとって初の三島作品。「31歳の鬼才三島が全青春の決算として告白体の名文に綴った不朽の金字塔。」という新潮の紹介文に惹かれ、購入し読み始めました。
確かに、文章は凄いですね。読み始めてすぐに「鮮度の落ちた現実、半ば腐臭を放つ現実が」という部分でこれは凄いと思いました。
ただ、内容があまりに主人公の内的世界の語りに偏っており、それを全部理解することは一読した限りではできませんでした。オレの読解力の問題とも思いますが、これはなかなか難しいでしょう。恥ずかしながら、主題もあまり掴めていないかも知れません。
なので全てを楽しめたとは思えませんが、文章表現の凄さは味わえ、それだけでも読んだ価値はあったと思います。
7は、何年か前からオレが持っている「アキバ系オタク」などというものに対する違和感と、この本の言うところの「オタクは死んでいる」という部分に、何か同じものがあるのかもと気になってブックオフで購入したもの。ちなみに作者の岡田斗司夫氏に関しては、オタキングと呼ばれていることと「いつまでもデブと思うな」が売れているようだな、といった程度の認識。
終始興味を持って読めましたが、読後に残るものはそれほど無かったです。まぁそうなのかなぁという感じだけが残りました。
8は文句なく面白かったです。新装版ということで手に取る機会を得たわけですが、もっと早くから、それこそ歴史とかに興味を持ち始めた小学高学年〜中学時代に読んでおけば良かったと、そう思わせる面白さがありました。
戦国時代を中心に9つの合戦が書かれていますが、特に「関ヶ原の戦」がよかったです。天下分け目の決戦らしいボリューム感もさることながら、秀吉末期から続く諸将の政治的思惑にも触れ、東軍と西軍の差につなげています。このあたりに清張らしさが感じられました。
9はカバーイラストに惹かれた部分もあり、購入。しかし内容はイマイチで、特に主人公の行動があまりに稚拙で動機も不明瞭で感情移入しづらく、また相手の義母の感情変化のくだりも説明が不足していました。エロいシーンの描写もワンパターンであり、長編の割に読み応えがありませんでした。